Diary 2004

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ミータン


★2004年5月〜2010年5月までの日記は、『日常で歌うことが何よりもステキ』に収録しました。
★2010年6月〜2011年6月までの日記は、『いやらしさは美しさ』に収録しました。


8月4日(水)


フジ・ロック・フェスティバルがどういうものなのか、20数年僕は音楽を離れていたため、よくわかっていない。人から出演おめでとうとか、うらやましいと言われてはじめて、ああそうなのかと思ったくらいなのだった。そして、知らないということが、かえって、自然体でやれるような、いい作用を及ぼすような気がしてならなかった。
会場は4万人収容できるグリーンステージ、1万人のホワイトステージ、5000人のレッドマーキーなど、ステージが6箇所から9箇所もあって、同じ時間帯に、いろんな場所で誰かしらがやっているのだ。僕らがやるところは、フィールド・オブ・ヘブンというところで、やはり5000人収容のところだ。
お客さんは、近くのホテルに宿泊したり、キャンプ場でテントを張ったりして、7月30日から8月1日までの3日間、スケジュール表を見ながら、目当ての会場に移動する。
ひとつのバンドと次のバンドの転換に約40分の間がある。その日、僕らの前にやるバンドの音を僕は聴いたことがなかったので、出来れば聴きたいなと思った。しかし、楽屋から会場に行く送迎車の関係で見に行くことは出来なかった。ちょうど、そのバンドが終わった頃に、僕らはマイクロバスに乗って会場に向かった。途中、会場付近で車は立ち往生した。ものすごい数の人がどーっと逆流して来たからだ。次に僕らがやることは、もちろん、パンフレットなどで知っているはずだと思うのだが、潮が引いたかのように、ほとんどの人が移動してしまった。
セッティングの時、ステージから客席を見渡すと、みごとにがらんとしていた。まるで、小学校の校庭のように、土が剥き出ていた。それでも、幾人かの人が前の方にかたまっていた。言葉が出なかった。みじめだった。申し訳なく思った。仲間もスタッフも何も言わない。触れたところでどうにもならない。
演奏をし出すと、いつもより音が散らばって聴こえた。屋内と野外の違いだ。一番調子の悪かったことは、思いもよらぬことだったが、ステージの後ろ、幕のうしろにもうひとつ、転換用のステージがあって、そこで次のバンドのセッティングのかけ声や物音が、曲間や静かな演奏時に、無神経な雑音として聞こえてきたことだ。気が散った。一箇所、歌詞が飛んだ。しかし、すべての言い訳は醜い。
それでも、ステージが終わる頃には、何百人かのお客さんがいた。笑顔で手を振ってくれた人がいた。知っている曲が始まると拍手をして、しーんと聴いてくれた。曲が終われば拍手をいただいた。ありがとう。目の前は、緑の山、青い空、時折、強い風が吹き、白い雲が流れていた。

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