Diary 2005

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蓮の花


★2004年5月〜2010年5月までの日記は、『日常で歌うことが何よりもステキ』に収録しました。
★2010年6月〜2011年6月までの日記は、『いやらしさは美しさ』に収録しました。


8月3日(水)


深沢七郎『生きているのはひまつぶし深沢七郎未発表作品集』(光文社)を読んだ。1987年に亡くなって、1997年には『深沢七郎集全十巻』(筑摩書房)が刊行され、新刊など出るはずがないと思っていた。
どの本に書かれてあったか忘れたが、「やりたいことが善で、したくないことは悪なんだ」という考え方に僕は影響を受けた。死の直前、育てていた梅の木を切り落としたり、親しかった人たちとも絶縁したらしい。通常の人とは、たぶん違う精神を持っていた。
「人が死ぬのはよいこと、おめでたいことと思う」。「東京は五十人くらいでよい。そうなれば、水はきれい。公害もない」。「思想って悪いものだよ。何かを思わせるのは悪いことで何もないことがよいことだからね」。「嫌なことは忘れて、楽しい時間をなるべく多く作ることだね。そのために稼いだり、乗り物に乗って移動したりするんだから。稼ぐのはめんどうだけど、楽しい時間を作るための仕度だからね。とにかく、生きているうちは暇つぶしがいい。ギターを弾いたり野菜を作ったりするのも暇つぶしだね」
「ラブミー農場」では田畑を耕した。今川焼屋「夢屋」を開いた。「夢屋書店」から私家版『みちのくの人形たち』『秘戯』を出版した。早川書店でも販売した。「本屋なんですが、掛けはいくらでしょうか」と訊ねると、「いや、掛けはないんですよ」という深沢さんの答え。個人にしか郵送しなかったようだ。それでも売りたかったので申し込んだら、1冊(早川義夫様と書かれたサイン本を)おまけしてくれた。

『秘戯』(1979年発行 夢屋書店1500円) 『みちのくの人形たち』(1979年発行 夢屋書店2000円)

8月1日(月)


高田渡さんのCD『ごあいさつ』で、「編曲・早川義夫」となっているが、それは間違いである。(現物は見てなくてインターネット上で知る限りだが)。
当時(1971年)、僕はURCレコードの社員で、このレコード制作(キングレコード発売)に関わったことは事実だが編曲はしていない。第一編曲なんて出来ない。憶えているのは、ジャケットデザインを頼みに湯村輝彦さんのお宅へ伺った時、奥さんがものすごくキレイだったことぐらいで……。
たとえば本の場合、別の出版社から再版される時など、当然連絡が入るわけだが、音楽業界というのは(昔の契約がいいかげんだったせいなのかよくわからないが)、権利関係が別な会社に移って、再発売されることになっても、何の連絡もなく、何の了解もなく、何のチェックもなく、勝手に出てしまうのである。少なくとも僕の昔のアルバムはそうで、たぶん他の方たちも同じかと思う。
僕などは昔の音源はすべて廃盤にしたいくらいだが、それも潔くないというか、過去にこだわるのは恥ずかしくもあり、それより今いいものを作ればいいわけであって。
けれども、そうやって原盤なり資料が新しい人の手へ渡って動いていくたびに、とらえ方の違いなり、単純なミスが発生し、今回の「編曲」になってしまったのだと思う。
あらゆる印刷物、インターネットの書き込みもそうだが、文字を信じてはいけない。声を信じるのだ。


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