Diary 2006

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クチベニシラン(口紅紫蘭)


★2004年5月〜2010年5月までの日記は、『日常で歌うことが何よりもステキ』に収録しました。
★2010年6月〜2011年6月までの日記は、『いやらしさは美しさ』に収録しました。


6月1日(木)


気になってしょうがない言葉がある。車谷長吉の言葉だ。「私は自尊心が強い人間である。虚栄心の強い人間である。劣等感の深い人間である。」(『錢金について』朝日文庫)
芥川賞に落ちたことが原因の一つで強迫神経症を患い、『飆風』(講談社)では、その怨みを実名入りで書いていたりする。のちに、小説を書くということは一種の悪だから、もう私(わたくし)小説は書かないと言うが、『文學界』2006年5月号「世界一周恐怖航海記 第三回」では、こんなこと書いていいのだろうかということまで書いてあり、おそろしい人だ。(8月8日追記。単行本『世界一周恐怖航海記』(文芸春秋 2006.7.30発行)では、その箇所は削除されていた)
白洲正子との対談では「人が人であることの悲しみを書きたい、それを書くことが文学じゃないかとぼくは思ってるんです」(『反時代的毒虫』平凡社新書)と語っている。


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