Diary 2015

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旭山動物園ペンギン 2014.10.6

1月28日(水)


 山本精一さんと柴田聡子さんと三人で「変態はステキ」ツアーを行った。きっかけは、僕に柴田さんの歌を教えてくれた女の子がいたからだ。「いきすぎた友達」や「倉内太・柴田聡子/あの娘ほんとリズムギター 練習風景」などを聴くと、普通に歌っているのに、なんか変なのである。山本精一さんの歌と共通しているようでいいなと思った。そんなことをtwitterにつぶやいたら、柴田さんが僕のライブを聴きに来てくれて、「山本さんと三人でやりましょう」と話が進んだ。

 山本さんから電話が入った。「一月十五日から、京都、名古屋、横浜、吉祥寺でやることに決まりましたから」「わー、ありがとうございます。僕も何かやれることがあったらやりますので」と伝えると、「ライブタイトルを考えて下さい」と指示が出た。そこですぐ、「夢で逢いましょう」「聡子サンドイッチ」「変態はステキ」「異常者の集い」を思いついた。

 「夢で逢いましょう」がキレイなので決まりかけたのだが、なぜか、三人とも「変態はステキ」が気になってしょうがなかった。聡子さんから、「変態、とても捨て難いのですが、お二人に比べて、わたしはまだまだ変態としての精進が足りないので、がんばります」とメールが入り、山本さんからは、「僕はやっぱり変態ですので、異議有りません」というご返事をいただいた。

 真犯人は「私が犯人です」とは白状しないように、本物は「私が本物です」とは言うはずがない。一見変態な人は、全然、変態ではありません。普通に歌っているのに、普通を目指しているのに、普通の人なのに、どうしても、変な部分がはみ出てしまう人が変態なのです。まさに、山本さん、柴田さんがそうです。

 セッション曲の候補が上がった。山本さんの「まさおの夢」「夢の半周」、柴田さんの「海へ行こうか」「しんけんなひとり」、僕の「からっぽの世界」「この世で一番キレイなもの」だ。柴田さんの歌は簡単そうに思えるのだが、むずかしかった。練習を終えても、頭の中でメロディがぐるぐる回っている。挫折しそうになったけれど、歌えそうな部分だけ歌わせてもらうことができた。

 彼女の『いじわる全集』の中の「しんけんなひとり」のエンディングのギターはテニスコーツの植野隆司さんが弾いている。そのギターが色っぽい。音色といい、あふれ具合が。「あー、音は愛撫なんだな」と思った。楽器を奏でるということは、その歌に対しての愛情の深さだ。音を聴けばわかる。あっ、この人はこういう愛し方をするのだと。山本精一さんの音楽は狂気の中に優しさがある。心が音に、声に表れる。

写真・山本精一 デザイン・山田真介

1月13日(火)
 映画『くじけないで』(2013年・日本)を観た。武田鉄矢が素晴らしい。神戸浩やでんでんという役者と同じくらい、リアルでわざとらしくなく、ああこういう人いるだろうなと思ってしまう。柴田トヨ役の八千草薫が息子に送る手紙がいい。「やさしくて短気な健一へ。自分のするべき事をする。モノに当らない。目の前の人を大切に」

 『運動靴と赤い金魚』(1997年・イラン)、『スタンリーのお弁当箱』(2011年・インド)も良かったなー。

1月3日(土)


 男の乳首は使っていないのにどうしてあるのか、永六輔さんは不思議に思い、進化論を研究している東大の先生に訊きに行く。すると先生は、「こんなすばらしい質問をしてくれた生徒はいない」と感謝しながらこう答える。

 「すべての男性はお母さんのお腹の中で女としてスタートします。女としてスタートしていきながら、いろいろと、ちょっと足りないものがあったりして、女でいられなくなっちゃって、落ちこぼれたのを男っていうんです。だから、人間の質からいうと女の方がずっと質は高いんです。ダメになっちゃったハンパ者が男なんです。男の胸の乳首は、昔、女だったけれども、今はもうダメ、男になっちゃったという意味なんですよ」

 永六輔『悪党諸君(青林工藝舎)を読んで、僕は十歳のころ見た夢を思い出した。おちんちんをくるって内側に丸めると女の子になり、くるって表に出すと男の子になる奇妙な夢だ。女の子にその話をしたら、「それ、赤ちゃんの時の記憶なんじゃない」と言われた。「小学生にそんな想像力があるとは思えないから、記憶だったと考える方が納得するね」

 僕の見た夢が母親のお腹の中にいた時の記憶だったと言い張るつもりは毛頭ない。単なるスケベだったからそういう夢を見たのかも知れない。ただ、否定はできない。受精したときから生命はあるのだから、精神の奥深くに沈んでいる全記憶の一部分が何かの拍子に、無意識の世界で見る夢の中に表れてきても、なんら不思議はない。

 「袋の裏に、下手な縫い目みたいな筋」こそが、「元は女だったっていう跡」なのだから、「男が威張っているのはよくない」「女を泣かしちゃいけないよね」ということを、『悪党諸君』を教材にして小学校や中学校で教えた方がいいのではないかと思う。


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