★2004年5月〜2010年5月までの日記は、『日常で歌うことが何よりもステキ』に収録しました。
★2010年6月〜2011年6月までの日記は、『いやらしさは美しさ』に収録しました。
7月20日(金)
電話の声を聴くだけで元気になれる人がいる。明るくて、優しくて、甘い声だ。「早川さーん」という響きがいい。電話を切ったあとも、しばらく耳元に残っている。言い方を真似してみるが全然違う。
いったい何を喋ったのだろう。忘れてしまった。声に酔いしれていただけだ。あとになって、あの受け答えで良かったのだろうかと反省したりする。
いつぞやは、話の流れから男友達の高級ソープランド体験を語ってくれた。そりゃすごい話だ。僕も負けじと昔のドライアイスの演出で雲の上でやっているような体験談をした。女の子といやらしい話ができるほど楽しいことはない。(Hな話とお金の話は一歩間違えるとたちまち不快になるが、爽やかか爽やかでないかは、その人の品性にかかっている)。彼女のHな話はおかしくて、まるで男友達と喋っているみたいだ。からっとしている。恋愛対象ではないからだろう。僕は恋愛対象なのに。
最近もう一人、いやらしい話をしてくれた女の子がいた。もっともその時、周りに他の人もいたのだが。「早川さん、私あがっちゃったみたいなの」。一瞬僕は、そりゃ良かった、すると生で出していいわけだと思ったが(もちろんそんな仲ではない。手も触れたこともない。いや一度だけ握手をしたことがある。あれがいけなかった。握手は友だちの印だからだ)、彼女は独身(たぶん)、第一まだ若い、となると、あがって良かったねなんて言ってはいけないわけで、さてどう答えたらよいものか、僕は顔だけ笑っている。
数日後、別のことで連絡があった時、メールの最後に報告があった。「あ、あとまだ『あがり』じゃなかったんでお知らせしなくちゃ、っと」。あー、なんて可愛いんだろう。歌だ。(本来そんな生理の話、僕は好きな方ではなく、そもそも僕に関係ないのに)楽しい。でもどうして僕にそんな話を聴かせてくれるのだろう。やはり恋愛対象ではないからだ。僕は笑いで返せない。彼女は軽やかで僕は重い。切ない。うまく行きたい人とはなかなかうまく行かないものだ。