3月22日(火)
リクオさんの企画構成で、浜田真理子さんと初めてご一緒させてもらった。先日の寺尾紗穂さんに続き、いつか共演できたらいいなと思っていた人と(リクエストしたわけではないのに)リクオさんがちゃんとセッティングしてくれたのだ。わかってくれている。寺尾さんの透明感、浜田さんの色っぽさ、リクオさんのピアノのビートとバラードに酔い、とても気持ち良く歌えた。
浜田さんと楽屋で恋の話をした。「恋をすると最後はボロボロになってしまうでしょ。だから、わたし今は仕事に集中しているの。シャッターを下ろすと誰も寄って来ない」。聞き間違いかもしれないが、そんな感じのことをおっしゃった。恋は(始まりは思ってもみないことだけど)必ず別れがやって来る。一途であればあるほど身も心もボロボロになってしまうことに僕は共感し「そうだね」と相槌を打った。
打ち上げは、物販を手伝ってくれたさくらさん、名古屋クアトロの上田健二郎さんも加わってくれて、リクオさんお薦めの麒麟楼にて、料理を頼み紹興酒を飲んだ。久しぶりに僕は楽しかった。僕の生きるテーマは「いやらしさは美しさ」だから、僕が話すことはそればかりだ。リクオさんは僕ほどHに対してむき出しではないから、返答に困っていた部分もあったけど、僕はリクオさんが好きなので、話したくてしょうがなかった。
浜田真理子「ミシン」3月16日(水)
リクオさんの企画「HOBO CONNECTION 2016」に参加。寺尾紗穂さんと「あの娘が好きだから」と「僕らはひとり」(作詞作曲もりばやしみほ)をデュエットした。寺尾さんが歌い出すと一瞬で風景が変わる。「♪笑っても泣いても僕らはひとり 話はないけど一緒にいたいよ」で声を重ねられると泣けてくる。リクオさんとは「アメンボの歌」(作詞作曲桑田佳祐)を歌った。むずかしい曲なので僕一人では歌いこなせないのだが、リクオさんのおかげでとても気持ちよく歌えた(ステージ上にはピアノが2台)。リクオさんと共演しない限りは再現できないのではないだろうか。世の中にはすごい人がいるものである。
寺尾紗穂「魔法みたいに」3月1日(火)
『かなわない』(タバブックス)の著者、植本一子さんと下北沢本屋B&Bで対談をした。この日初めて僕は一子さんとお逢いしたのだが、お話をいろいろと伺っているうちに、随分と似ている部分があった。恋愛はするけれど、不倫はしたことがない。ご主人が寛大で嫉妬しない。うちの奥方も寛大で嫉妬しない。僕がめげても応援する。そのかわり、一子さんと僕は嫉妬深い。もちろん、恋が叶えばいっぱいの歓びと楽しい思い出は作れるのだが、悲しみや苦しみも十分味わう。
『かなわない』の最後の章「誰そ彼」は、セリフと描写があまりにリアルであるため、自分もその場に居合わせているような気分になって胸が痛くなる。一子さんの筆力はすごい。技術とかではなく、まっすぐ書こうとしているだけだからだ。一子さんの撮る写真と同じだ。作為を持っていない。雑音がない。相手の一番輝いている表情をとらえる。内に秘めたるものはまだきっとたくさんあるだろうから、仮に波瀾万丈な人生を送ることになっても、一子さんは華麗に羽ばたいていく気がする。
僕はもう駄目だ。曲はできないし、文章も書けない。なぜ書けないのかは恋が終わったからである。伝えたいこともなければ伝えたい人もいない。それでも僕は呼ばれれば歌いに行く。歌にのせて今の自分の気持ちをあらわすことができる気がするからだ。その時だけ僕は生きている。そして終演後深い眠りに入る。今日のトークショーのように、植本さんのような優しい方がいらして、耳を傾けてくれる方がいらっしゃるうちは、まだお話しすることはある。