8月18日(土)
高田渡詩集『個人的理由』(文遊社)が復刊された。1969年私家版が出版されてから43年ぶりである。渡ちゃんが18歳から20歳までに書いた詩だ。「♪三条に行かなくちゃ 三条堺町のイノダヘネ!」と歌い出される<コーヒーブルース>や<日曜日>、僕が勝手に曲を付けた<シャンソン>、<君の亭主>も載っている。
<君の亭主>の時はよく憶えている。電話口で僕は歌って聴かせたのだ。「ここんとこ、ちょっと字余りだから、削ってもいいかな」と訊くと、「いや、そのままでも歌えるでしょ」とたしなめられた。たしかに、練習してみると、なんのことはない、原型のまま歌えた。渡ちゃんの歌作りはそうだ。メロディより言葉を大事にする。一つの音符の中に言葉をぎゅっと詰めたり、あるいは伸ばしたり。その方が同じメロディを歌っても自然と変化が出る。
今回は、初単行本化の詩12篇も加わり、著者自身が撮影した写真も収録されている。映画のワンシーンのようだ。ハードカバーだから厚さが違う。私家版は5ミリだったが、文遊社版は2センチある。装丁がいい。私家版とそっくりだ。なんと品のいいことよ。音楽もそうだ。人が加わると、何か企みが入ると、とかく装飾したくなるものだが、手を加えないという方法もあるのである。