2月25日(土)
高田渡さんのCD《ごあいさつ》で、「編曲・早川義夫」になっているが、それは間違いである。このことについては、2005年8月1日の日記(『日常で歌うことが何よりもステキ』P60)に書いたことで、事情は繰り返しませんが、文字、活字、書き込み、言葉を信じてはいけない。信じていいのは、語れない人の声だけである。2月6日(月)
あっ、思い出した(ライブ後は頭がボヤーっとしているせいだ)。神藏美子さんが4日のライブにいらしてくれて、本を求めていただき、サインをさせてもらったのだ。「藏」という字がむずかしくて、その場で練習して書いた。昔、朝日新聞の読書欄で、「最近どういう本を買いましたか」というようなコーナーがあり、取材を受け、5冊のうち、まっさきに上げたのが神藏美子さんの『たまもの』という写真集であった。僕は表紙を見ただけで泣けてきてしまうのだ。
そのことをお話したのだけど、もしかして、題名を「たまゆら」って言ってしまったかも知れない。それと最近、末井昭さんの「自殺」(朝日出版社)という文章をネットでまだ一、二篇しか読んでいないのだけど、淡々と書かれているのに強烈な印象を持ったこともお話しした。二言三言の会話(いや僕が一方的に喋っただけだ)、あこがれの人に逢えるのはすごい。
『ぼくは本屋のおやじさん』(晶文社)を装丁してくれた平野甲賀さんにもごあいさつ出来た。早川書店のブックカバーとしおり(絵は藤原マキさん)のデザインを頼みに、成城のお家に訪ねに行った時、玄関口にものすごく大きな猫がいたことを思い出す。今回の主催スタジオイワトの平野公子さん、二階堂和美著『しゃべったり 書いたり 』(屋上)の編集者林さやかさん、いろいろなめぐりあいをありがとうございました。2月4日(土)
平野甲賀さんの奥様、公子さんの経営するスタジオイワトにてソロライブ。古いビルの一階を改装して作られたスペース。土日は周りの会社が休みなので、音の苦情はないそうだ。グランドピアノのふたは広げず、歌声はマイクでほんの少し拾うだけ(天井の四隅にBOSEの小さなスピーカーがある)。ほぼ、生声に近い形である。
開場時間前に、早めにいらした方を、公子さんは、「寒いでしょうから」と、中に招く。リハーサルしている姿が丸見え丸聴こえ。僕は本番よりリハに強い男。数人誰かが聴いていると思うと、俄然、うまく歌える。肩の力が抜けている分、優しくも強くも歌える。そのかわり、本番は緊張、肩に力が入り、力み、一本調子になってしまう傾向がある。
そうならぬよう、身体をほぐしたり、心を下腹(丹田)に沈め小さくし、そこから宇宙を見つめるなんてことをしてみたり、ワインを一杯飲んだりするわけだけど、どうしても本番は平常心になれない。性格的に心配症なところがあるからだろう。間違ってしまうのではないか、失敗してしまうのではないかと、悪い方向へ考えてしまう。結局は自信がないからだ。だからたまに、お褒めの言葉をいただくと、元気百倍になる。人は褒められて育ってゆく。不安をぬぐい去れない時は、自惚れていいのだ。いい言葉を見つけた。
「ステージに上がったとき、自分が一番上手いと思え。ステージを降りているとき、自分は一番下手だと思え」(エリック・クラプトン)
終演後、原マスミさんにお逢いした。「あらら、久しぶりー」。本屋時代(まだ再び歌い出していない時)、原マスミさんの「♪ 東京中で一番可愛い君〜」 を聴いて、いい歌だなーと思ったことがある。その後、カバーしようと試みたけれど、むずかしくてあきらめてしまった曲だ。辻香織さんも浅草から駆けつけてくれた。アルバム「ひまわり」は〈ガーベラ〉が良かった。14歳の頃から知っているので、随分大人になった印象を持った。