1月30日(月)
早川義夫さま
朝日新聞be編集部の中島です。 土曜日は、割り込みで参加させていただきまして、大変ありがとうございました。 なかなか日程があわなくて、ようやく久しぶりに早川さんの生演奏を聞くことが出来ました。 聞きながら、「サルビアの花」の取材のときに、佐久間さんがおっしゃっていた「早川さんにはうたう根拠がある」 という言葉を何度も反芻しました。今を、うたうこととしてでしか存在しえない、という 非汎用性とでもいうべき、切実な表現のあり方が早川さんなのだなと感じました。 お邪魔になるので、あまりお話はしませんでしたが、連れて行ったのが10年ほど前に、晶文社の雇われ編集長をやっていた中川六平という人間で、彼も感銘を受けておりました。 また、ふらりと覗きに行かせてください! とりあえずお礼まで。
中島鉄郎様
お礼のメールを出そうとしていたところ、 先にメールをいただき、恐縮しています。 クッキーもみんなで美味しく頂きました。 あの時の新聞記事、本当に、随分反響がありました。 ありがとうございました。 「えっ、早川義夫って、今も歌ってるの?」 みたいなのが多くて、内心ガクッときましたが、 いかに、今の活動が知られていないかを感じました。
過去に生きているような自分が嫌で、 あれからの僕は、「今の歌声を聴いて欲しい」と 機会さえあれば、つぶやいています。 この間も、ツイッターに、 「『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』と思ったのは、42年ほど前のこと。今は、『かっこいいことはかっこ良くて、かっこ悪いことはかっこ悪い』と思っていますよ。」 と、ツィートしたら、「えっ、そんなバカな」「どうしてくれるんだ」みたいな反論と、 パチパチみたいな賛成の反応があって、その時、フォロワー数が伸びました。 言葉の意味は、どっちでもよくて……。
佐久間さんが「売れるものは売れる理由があり、 売れないものは売れない理由がある」と言ってましたが、 たしかに、売れないものは、売れない理由がありますよね。 少しずつ売れるよう努力していこうと思っています。 もう先は短いですけれど。 また、機会がありましたら。
早川義夫1月7日(土)
早川義夫様
突然のメール失礼致します。 昨年の夏、青森は「夏の魔物」という野外イベントでご挨拶させて頂いた(緊張の余りヘンな挨拶だったので覚えてらっしゃらないかもしれません)毛皮のマリーズというバンドをやっておりました志磨遼平と申します。 その節は、ステージの後でお疲れのところを楽屋口でお止めしての失礼な挨拶、誠に申し訳ございませんでした。
この度、文遊社様から新刊『ラブ・ゼネレーション』が私の所属している事務所の方に贈られており、嬉しさよりも驚きが勝ってしまって、これまた失礼かと思いながらこうやってご本人様に突然のメールを差し上げた次第です。 どうして僕のような一ファンに、ご丁寧に新刊を贈って頂けたのだろう? と無い頭をひねりまして、もしかすると早川様の著作『ぼくは本屋のおやじさん』を、どこかの雑誌企画の「バンドマンが薦める愛読書」のようなコーナーで紹介させて頂いたのが、お目に触れたのかもしれない…などと思い上がったりしております。他に思い当たるフシがなかったもので…
いずれにせよ、こうして大好きな方の新刊を、贈って頂いて拝読できる幸運に恐縮すらしております。大切に、何度も何度も目を通そうと思います。 そして、もちろん早川様の著作はずっと愛読している自分ですが、僕はなんといってもその歌にいつも大きな感動を頂いております。 僕は、歌を歌うことを今や仕事にしていながら、未だ自分の歌声を認められないでいます。歌い出す時はいつだって喉がギュッと小さくなってしまうのを感じます。これは劣等感からくるものでしょう。
早川様が書かれた『たましいの場所』は、そんな未熟な僕にも優しく寄り添って、歌う心を解きほぐしてくれる書です。 昨年、生まれてはじめてボイストレーニングにも通ったのですが、その先生(ミチコ先生、とおっしゃいます)について習う事を決めたきっかけは、先生も早川義夫さんのファンでいらっしゃったからでした。 ボイストレーニングに対して、オペラ歌手みたいに歌え、なんて言われるんじゃ…? などとおかしな偏見を持っていた僕は、この先生ならきっと正しく歌を教えて下さる、と安心できたのです。
つまらない話をだらだらと書き綴ってしまいました。 本当はご本のお礼だけを述べたかったのです。 どうもありがとうございました。頂いたご本はずっと大切にします。そしてまたライブにも伺わせて下さい。どうかお体にお気をつけて、僕は早川義夫様のファンです。
志磨遼平
志磨遼平様
お便りありがとうございます。 こんな誠実なお手紙をいただいて、とても感激しました。 「歌い出す時はいつだって喉がギュッと小さくなってしまう」 くだりを読んで、身につまされました。 僕はいつもステージに上がるたび、ドキドキします。 なぜ、こんな弱虫が人前で歌う約束をしてしまったのだろうと後悔さえします。
自分の歌声を聴いて、下手だなーとか、気持ち悪く感じる原因は (主に昔の音源ですが)、全部一本調子だからです。
誰に向けて歌うのかを考えると少し落ち着きます。 一曲の中に、映画のようなドラマ、情景を描かなければいけないなと最近思っています。 芝居に例えれば、演技していることを感じさせないのがいい役者なので、 いかにも歌っています、いかにも演奏していますというのは、 まだまだ駄目なのだろうなと、日々、反省しています。
それにしても、こんなステキなお手紙をいただき、 僕だけが一人占めするのがもったいなく思えます。 僕のHPの日記欄に、このメールのやり取りを載せたいなと思いましたが、 駄目ですよね。失礼ですよね。
1 特別許す。 2 それは、やめましょう。 番号でお答えいただければ、幸いです。 駄目でも、僕は、全然かまいません。駄目でもがっかりしませんので。 志磨さんに対する僕の気持ちは、何ら変わりありません。 本当に、ステキなお手紙ありがとうございました。
早川義夫