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書評 21

もてない人の気持ちがわかる

光明寺の猫


朝日新聞掲載 2005年8月28日

小谷野敦[著] 帰ってきたもてない男 女性嫌悪を超えて (ちくま新書・735円)
石井正之[著] 人はあなたの顔をどう見ているか (ちくまプリマー新書・735円)
渡辺和子[著] 「ひと」として大切なこと (PHP文庫・600円)


 もてないのでもてない人の気持ちがわかる。『帰ってきたもてない男』の著者小谷野さんが僕と同じかどうかはわからないが、もてない男ほど女にうるさい。
 僕が思うに、もてない男は世間にもうるさい。自分を棚に上げ人にきびしい。友達がいない。流行について行けない。恋に恋をするだけで男前とは程遠い。
 孤独には強いはずなのに、プールの中で熱帯魚のように戯れているカップルを見ると泣けてくる。男がみんな自分よりダサく思える。うぬぼれている。
 劣等感を持っているので、優越感を得たくてしょうがない。批判されると無性に腹が立つ。ほめられるとぐにゃっとなる。仕事熱心だ。まじめだ。責任感もある。人を笑わせることだってできる。なのにもてない。
 小谷野さんは「出会い系サイト」にも挑戦する。僕も人一倍興味はあるが、騙(だま)されそうなのと、ひどくみじめな思いをしそうなのでまだ足を踏み入れていない。
 あとがきで小谷野さんは「もてる女ともてる男の間でぐるぐる相手が変わっているだけで、もてない男に女は回ってこない」と自ら夢を打ち砕く。
 そして谷崎潤一郎をまねて「七ヶ条の求婚条件」を提出する。それが笑える。しかし、僕と一致しているのは第四条の「特に美人でなくともよいが、私の好みの顔だちであること」だけで、「学歴や知性にこだわる」点などにおいて、まるで正反対なのにはびっくりした。
 幸福は一種類だけど不幸は何種類もあると言われるように、もてない男にはいろんなパターンがあることを知った。
 『人はあなたの顔をどう見ているか』は、生まれつき顔に赤アザがある人が、いじめや無神経な視線に対し、どのように対処していけばよいかを書いた本である。もしも逆の立場だったらという想像力をみんなが持てば、傷つけ合うことは少なくなると思うのだが。ぜひ多くの方に読んでもらいたい。
 『「ひと」として大切なこと』より。「人は、孤独の中で成長します。わざと孤独にならなくてもいいのですけれども、否(いや)が応でも襲ってくる孤独感があったとしたらば、それをしっかり受け止めて、闇がもったいないという感覚で、この孤独を味わえる間味わって、安易なものでこわさないでおいてください」

  

書評 21
朝日新聞読書面「ポケットから
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