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書評 8

モテなくたって、恋をしよう

ぼたん


朝日新聞掲載 2004年2月8日

室井佑月[著] ああ〜ん、あんあん (集英社文庫・533円)
梅香彰[著] 「恋する力」を哲学する (PHP新書・680円)
レフ・トルストイ[著] 文読む月日(上) (北御門二郎訳、ちくま文庫・1500円)


 『ああ〜ん、あんあん』は、恋愛、結婚、出産、破局までを綴ったエッセイである。「男はスケベで動く」なんていう名言もある。実感がこもっている。何より登場人物がいい。みんな愛すべき人たちだ。やさしいダーリン、気さくな友だち、そして、父上母上がなんともいい味を出している。島田雅彦氏も料理をしにやってくる。このまま、連続ドラマとして成立しているのではないだろうか。
 「便器が出るテレビ」というビデオを鑑賞した時の話など、バッチイ言葉や場面がいっぱい出て来るのに、不思議と笑えて、なぜか、しみじみとした気持ちになる。頭や手で書かれたものではないからだ。あとがきと丸山あかねさんの解説を最後に読んで、一気にじんと来た。
 人はなぜ恋をするのだろう。僕など孫までいるというのに、いまも恋を探している。でもモテない。まったくモテない。モテる秘訣を友人に訊いてみた。@まめになる。Aタイミングを逃さ ない。何でもいただく。Bめげない。
 ますます自信をなくした。正反対だからだ。お互い様だが、誰でも良いのではない。なぜ、あの人ではなくてこの人がいいのか。その答えを『「恋する力」を哲学する』に見つけた。「恋の相手はもともと自分だった」という。
 「恋愛は自分の中に眠っている力を目覚めさせ、それを発揮させる起爆剤なのだ」「いい恋愛ができることと、自分らしく生きることは、ほとんどイコールだと私は思う」
 もし、稲妻に打たれるが如く「分身」に出逢えたら、どんなにステキだろう。切なくとも、たとえ、みじめに終わっても、きっと、何かを生み出すエネルギーとなる。モテなくたって、恋をしよう。 美は醜さの隣にある。一歩間違えば罪。「恋は狂気」だから。
 『文読む月日』は、トルストイ自身が集めた箴言集の数々。「自分の著述は時が経つにつれて忘れられるであろうが、この書物だけはきっと人々の記憶に残るに違いない」と語っている。
 「君が話すとき、その言葉は沈黙にまさるものでなければならない」(アラビヤの諺)。「毎朝毎朝目が覚めるとすぐ、今日は誰か一人でも喜ばせることはできないだろうか? と考えることほどいいものはない」(ニーチェ)


書評 8
朝日新聞読書面「ポケットから」
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